1.遺留分侵害額請求の時効は「1年」と「10年」の2つ

遺言や生前贈与のせいで、自分の取り分が極端に少なくなったとき、法律上最低限の取り分(遺留分)に足りない分を、多く受け取った人にお金で請求できます。これが遺留分侵害額請求です。この請求には、次の2つの期限があります。
1-1.消滅時効:知った時から「1年」
相続の開始と、自分の遺留分を侵害する遺言・贈与があったことを知った時から1年で、請求する権利が消えます。実際に問題になるのは、ほとんどがこの1年です。
1-2.除斥期間:相続開始から「10年」
侵害されていることを知らなかった場合でも、相続開始(亡くなった日)から10年が過ぎると請求できなくなります。この10年は途中で延ばしたり、止めたりする仕組みがない、最終的な期限とされています。
| 期限 | いつから数える | 期間 | 止められる? |
|---|---|---|---|
| 消滅時効 | 相続の開始と、侵害する遺言・贈与を知った時 | 1年 | 請求の意思表示で止められる |
| 除斥期間 | 相続開始(亡くなった日) | 10年 | 止める仕組みはない |
1-3.具体例:日付で見ると
2026年4月1日に父が亡くなり、「全財産を長男に相続させる」という遺言があることを、二男が2026年6月15日に初めて知ったケースです。
- 亡くなった日
- 2026年4月1日
- 遺言を知った日(1年の起点)
- 2026年6月15日
- 1年の期限(消滅時効)
- 2027年6月15日
- 10年の期限(除斥期間)
- 2036年4月1日
※期限は、起点の日の1年後(10年後)の同じ日が目安です。起点となる日は、事情によって変わることがあります。
2.時効の「知った時」とは、いつのこと?

1年の起点は「亡くなった日」とは限りません。何を知った時から数えるのかを、確認しておきましょう。
2-1.「亡くなったこと」と「侵害する遺言・贈与」の両方を知った時
次の2つの両方を知った時が起点です。どちらか片方だけでは、1年は始まりません。
- 被相続人が亡くなったこと(相続の開始)
- 自分の遺留分を侵害する遺言や贈与があったこと
2-2.起点が亡くなった日とずれる例
- 亡くなってから数か月後に、遺言書があることや、その内容を初めて知った
- 遺産の一部が、生前に他の相続人へ贈与されていたことを後から知った
2-3.迷うときは、自己判断で先延ばしにしない
「知った」といえるかどうかは、具体的な事情によって判断が分かれることがあります。「まだ知らなかったことにできるはず」と考えて動かずにいると、期限を過ぎてしまうおそれがあります。起点が分からないときほど、早めに確認しておきましょう。
3.時効を止める方法は、期限内に「請求する」と伝えること
3-1.裁判は不要。請求の意思を伝えるだけで1年は止まる
1年の期限は、期間内に、相手方に対して遺留分侵害額請求をするという意思を伝えることで止まります。裁判を起こす必要はありません。
3-2.内容証明郵便(配達証明付き)で送るのが一般的
意思表示は、口頭やメールでも法律上は可能とされています。しかし「いつ、誰に、何を伝えたか」を後から証明できなければ、期限に間に合ったかどうかで争いになりかねません。そのため、内容証明郵便(配達証明付き)で送るのが一般的です。
3-3.書面に書く内容
・誰の相続についての請求か(被相続人の氏名・死亡日)
・遺留分侵害額に相当する金銭を請求する意思があること
・差出人・宛先の氏名と住所
3-4.遺言の無効を争っているときも、期限は進む
「遺言そのものが無効だ」と争っていても、その結論が出るまで遺留分の期限が止まるわけではありません。遺言が有効と判断される場合に備えて、期限内に遺留分侵害額請求の意思表示もしておくことが、一般的に行われています。
期限が近い・数えられない方は、まずご相談ください
初回相談無料・秘密厳守。起点の確認から、書面の作成までサポートします。
4.遺留分はいくら請求できる?割合と計算例
4-1.遺留分の割合:全体の1/2(親だけなら1/3)
遺留分が認められるのは、配偶者・子・親などです。兄弟姉妹には遺留分がありません。全体の割合に、それぞれの法定相続分をかけたものが、一人ひとりの遺留分です。
| 相続人の組み合わせ | 遺留分全体の割合 | 具体例 |
|---|---|---|
| 配偶者・子がいる場合 | 財産の1/2 | 配偶者と子2人 → 配偶者1/4、子は各1/8 |
| 親など(直系尊属)のみ | 財産の1/3 | 親2人のみ → 各1/6 |
| 兄弟姉妹 | 遺留分なし | 兄弟姉妹には遺留分がありません |
4-2.計算例:遺産6,000万円で、二男が請求できる金額は750万円
相続人は、配偶者(母)、長男、二男の3人。遺産は6,000万円で、遺言で全てを長男が受け取ることになっていました。二男が請求できる額は次のとおりです。
- 遺産の総額
- 6,000万円
- 遺留分全体(1/2)
- 3,000万円
- 二男の法定相続分
- 1/4
- 二男の遺留分(1/2 × 1/4 = 1/8)
- 750万円
- 二男が請求できる金額
- 750万円
※債務(借金)や、生前贈与がある場合は、算定の基礎となる財産の額が変わります。実際の金額は個別の事情で異なります。
5.請求したあとの流れ:協議・調停・訴訟
意思表示をしても、すぐに支払ってもらえるとは限りません。多くの場合、次の順で進みます。
相手方との話し合い(協議)
遺留分として支払うべき金額や、支払い方法について話し合います。
家庭裁判所の調停
話し合いがまとまらないとき、原則として訴訟の前に、家庭裁判所で調停を行います。
訴訟
調停でもまとまらない場合は、裁判所に訴えを起こして判断を求めます。
5-1.相手が「すぐには払えない」と言ったら
相手がすぐに支払えない場合、裁判所に請求することで、支払いの猶予(支払期限の許与)が認められることがあります。話し合いの中で、分割払いに合意する例もあります。
5-2.請求したあとも、お金を請求する権利には時効がある
意思表示のあとに発生する「金銭を支払ってもらう権利」には、別途の消滅時効(原則として5年など)があります。請求したあとも、長く放置しないようにしましょう。
6.弁護士に頼むと何が変わる?費用の目安
6-1.任せられること:起点の整理から、交渉・調停・訴訟まで
- 「知った時」がいつかの整理と、期限の確認
- 内容証明郵便の作成・送付
- 相手方との交渉、遺留分の金額の算定
- 調停・訴訟の手続き
期限を意識しながら、一貫して任せられるのが、弁護士に依頼する大きな違いです。
6-2.当事務所の費用の目安(税込)
遺留分侵害額請求(相続分割・遺留分請求)の費用は、次の2つのパターンから選べます。
| パターン | 着手金 | 報酬金 | 日当 |
|---|---|---|---|
| ① 着手金なし | 0円 | 経済的利益の22% | 11,000円 |
| ② 着手金あり | 330,000円 | 経済的利益の17.6% | 11,000円 |
※経済的利益とは、請求によって実際に得られた金額のことです。別途、実費(郵送料・印紙代など)がかかります。事案によって異なる場合があるため、詳しくは無料相談でご案内します。
- パターン① 報酬金(1,000万円 × 22%)
- 220万円
- パターン② 着手金
- 33万円
- パターン② 報酬金(1,000万円 × 17.6%)
- 176万円
- パターン② 合計
- 209万円
※経済的利益が約750万円のとき、2つのパターンの合計は同額になります。見込まれる金額が大きいほど、②が有利になります。
7.遺留分の時効に関するよくある質問
Q.遺留分侵害額請求の時効は何年ですか?
A.相続の開始と遺留分を侵害する遺言・贈与があったことを知った時から1年です。また、知らなかった場合でも、相続開始から10年で請求できなくなります。
Q.時効の1年は、いつから数えますか?
A.亡くなったことと、自分の遺留分を侵害する遺言や贈与があったことの両方を知った時からです。遺言の内容を後から知った場合などは、亡くなった日と異なることがあります。
Q.時効を止めるにはどうすればよいですか?
A.1年以内に、相手方へ遺留分侵害額請求の意思表示をします。証拠が残るよう、内容証明郵便(配達証明付き)で送るのが一般的です。
Q.請求は、口頭やメールでもよいですか?
A.意思表示そのものは、方法が限定されていないとされています。ただし、期限内に伝えたことを証明できないと争いになるため、内容証明郵便で送るのが一般的です。
Q.1年を過ぎてしまった場合、もう請求できませんか?
A.原則として請求できなくなりますが、「知った時」がいつかによって結論が変わる場合があります。過ぎたかもしれないと思った時点で、早めに弁護士へご相談ください。



